次の日の朝、
河童はきゅうりが好きなんだっけと思い出して、
かあちゃんに「冷蔵庫のキュウリ、1本もらうね」と告げ、
ビニール袋にキュウリを入れて、
靴は川に忘れてきたから、
家にあった大きめのサンダルで、
これまた自転車も川に忘れてきたから、
徒歩で川に向かった。
徒歩で向かう川は意外に遠かった。
家族には、河童に会ったことを言わなかった。
誰かに話したい衝動にかられたが、
誰かに話すと、河童に会えないような気がしたから、
話をするのはやめることにした。
川には、昨日のままの自転車と靴とTシャツがあった。
昨日と違ったのは、見渡しても河童がいないことだった。
お礼を言おうと思ったのに河童はいない。
会いたいと思った時にいないと余計、会いたくなる。
「かっぱああああ」でかい声で叫んだ。
が、風景は何も変わらない。
蝉の鳴き声だけが聞こえた。
昨日、川で溺れたこともあり、
今日は海パンをはかずに来た。
夏休みあけに泳げるようになりたいという気持ちもどこかに行った。
まさしく三日坊主とはこのことだった。
せっかく来たのだから、
もう少し河童を待つことにした。
暇だから、川に転がっている無数の石の一つを掴み、
アンダースローで川に向かって投げた。
石はてん、てん、てんと三回、川を走り、沈んだ。
何度か、同じことを繰り返しているうちに飽きた。
まわりを見ても、河童はやっぱりいなかった。
次にやったのが、石から石へと渡って歩くっていう遊び。
バランスを取りながら、グラグラ不安定な石の上を歩いた。
その一つの石が、妙に滑って、バランスを崩して、俺は、すっころんだ。
ズボンはべちょべちょ。
その時、
「キャッ、キャッ、キャ」って笑い声がしたんだ。
声をする林の方に目をやったら河童。
河童を見て、慌てふためいて、また、すっころんだ。
Tシャツもべちょべちょになった。
川に倒れたまま、再び、河童を見た。
昨日は、動揺していたから、ちゃんと見てなかったけれど、
その河童は、俺よりも背が低かった。
今日は、全然、恐怖を感じなかった。
「おーい」
俺は、大きく手をふって、こっちに来てと、手を振った。
河童は、おそる、おそる、こっちに歩いてきた。
※この物語はフィクションです。
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