どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

海賊のおじさん(5)

つまらねぇ・・・。


唸るような声が心の奥の方から聞こえてくる。
今年に入って何度目だろう。

左足を失ってからまもなく1年、
12月って月は、その年を振り替えるきっかけを与えてくれる。

この1年、パチンコに行った日々もさることながら、
つまらねぇと呟いた日々も数え切れない。

凍てつくアスファルトの上を、
車で走りながら振り返った。


何とかせねば、何とかせねばという気持ちが、
わいては、泡ぶくのように消えてなくなった。

何をどうしたら良いのだろう。
何とかしたいけれど、
何をどうしたら良いのだろう。
何度となく繰り返した。

思ったことといえば、
左足があればなぁ。
左足が戻ってきたらなぁ。

何度となく思った。

が、ない。
何度、願えどない。
ないものはない。


生きるってのは、何て大変なんだ。
どうして、周りの人達は、踏ん張っていけるんだ?
そもそも生きるってなんだ?

割にあわねぇ。
割にあわねぇぞ。

生きるってのは、辛いイベントが多すぎやしないか?


夕飯をコンビニで買って、
再びハンドルを握った。


このままいっても何も変わらない。
20年経って、50代になろうが、
このままいっても何も変わらない。確実に。

同じような毎日を繰りかえせば、否応無しにわかる。
つまらねぇなと呟き、パチンコを打っているのは嫌だ。

まぁ、どうして良いかはわからんけど、
とりあえず、パチンコを打っていても変わらない。

うまくいかないことが多すぎるのに、
何もしなければ何も変わらない。
公平にできている。
こんなところばっか公平かよ。


生きながらにして、生まれ変われ。
生きながらにして、生まれ変われ。


そう、何度となく自分自身に言い聞かせ、
パチンコ会館玉将を背に車を走らせた。



おわり



※今回の話はフィクションです。



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