どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

海賊のおじさん(3)

パチンコ会館玉将は、昭和の空気が漂う店構えをしている。

時代遅れで、みんなから忘れ去られたような、
こんな建物が俺は好きだ。
なぜ好きかと聞かれてもうまくは答えられないが、
なぜか惹かれる。

パチンコは勝つために行くわけだから、
俺も含めてみんな、出そうな店に行く。
みんなが出そうだと思う店は大型店。



確かに大型店には、何箱も積んでいる人がいる。
ただ、何人もの人の財布から金がなくなる。
何十人かから集めた金の何割かを店がもらい、一部を、何人かに分ける。
所得の再分配
吸い取られる確率が高い所得の再分配

まぁ、やる前から負けることを考えている奴なんていない。
勝つために店の中に入っていく。

パチンコ会館玉将は、
外見だけでいけば、出そうにない雰囲気を醸し出している。
ただ、大型店が建ち並ぶ今も生き残っているだけあって、それなりに人がいる。
俺にとっては、ちょうど良い塩梅だ。

大型店では、打ちたい台も座れない時があるけれど、
玉将は、ほどよく座れる。

3日間の当たっている回数、
現在の回転数を見て、
どれが当たりそうな台かを考える。
インスピレーションも大切だ。

俺は、出そうだと思う一台を決め、
松葉杖を隣の人の邪魔にならないように置き、
一万円札をパチンコ台に投入した。

”貸”ボタンを押すと、500円分の銀色の玉が、
ぶつかり合いながら出てくる。

一回も当たらなければ、一万円は一時間程でなくなる。
今は、1円パチンコってのもあるから、
1円パチンコだったら、当たらなくても何時間か遊べるのだろう。
俺は4円だ。
やるかやられるかだ。

一回当たれば約5,000円。

まぁ、そんな簡単には当たらない。
簡単に当たる時もあるけれど、大抵、当たらない。

一万円、二万円と、機械は、お札を飲み込んでいく。
二万円から三万円にさしかかるあたりから、
今日は、当たる気すらしなくなってくる。

店に入る前のテンションは、どこへやら。
やらなければ良かったと後悔の念すらよぎってくる。

パチンコは諸刃の剣みたいなもんだ。
落ちている気分は、
勝てば気分が上がる代わりに、
負ければ更に落ちる。

自己嫌悪に陥り、帰りの車のハンドルを握った。
泣きそうだ。

大切な人が、言っていた言葉を思い出す。
「嫌な思いをしながら働いた金を、パチンコに使うなんてもったいない」

三万円は、何日働いた分なんだろう。

もう辞めよう。
こんな無駄な過ごし方は、もう辞めよう。


つづく。



※今回の話はフィクションです。


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