パチンコ会館玉将は、昭和の空気が漂う店構えをしている。
時代遅れで、みんなから忘れ去られたような、
こんな建物が俺は好きだ。
なぜ好きかと聞かれてもうまくは答えられないが、
なぜか惹かれる。
パチンコは勝つために行くわけだから、
俺も含めてみんな、出そうな店に行く。
みんなが出そうだと思う店は大型店。
確かに大型店には、何箱も積んでいる人がいる。
ただ、何人もの人の財布から金がなくなる。
何十人かから集めた金の何割かを店がもらい、一部を、何人かに分ける。
所得の再分配。
吸い取られる確率が高い所得の再分配。
まぁ、やる前から負けることを考えている奴なんていない。
勝つために店の中に入っていく。
パチンコ会館玉将は、
外見だけでいけば、出そうにない雰囲気を醸し出している。
ただ、大型店が建ち並ぶ今も生き残っているだけあって、それなりに人がいる。
俺にとっては、ちょうど良い塩梅だ。
大型店では、打ちたい台も座れない時があるけれど、
玉将は、ほどよく座れる。
3日間の当たっている回数、
現在の回転数を見て、
どれが当たりそうな台かを考える。
インスピレーションも大切だ。
俺は、出そうだと思う一台を決め、
松葉杖を隣の人の邪魔にならないように置き、
一万円札をパチンコ台に投入した。
”貸”ボタンを押すと、500円分の銀色の玉が、
ぶつかり合いながら出てくる。
一回も当たらなければ、一万円は一時間程でなくなる。
今は、1円パチンコってのもあるから、
1円パチンコだったら、当たらなくても何時間か遊べるのだろう。
俺は4円だ。
やるかやられるかだ。
一回当たれば約5,000円。
まぁ、そんな簡単には当たらない。
簡単に当たる時もあるけれど、大抵、当たらない。
一万円、二万円と、機械は、お札を飲み込んでいく。
二万円から三万円にさしかかるあたりから、
今日は、当たる気すらしなくなってくる。
店に入る前のテンションは、どこへやら。
やらなければ良かったと後悔の念すらよぎってくる。
パチンコは諸刃の剣みたいなもんだ。
落ちている気分は、
勝てば気分が上がる代わりに、
負ければ更に落ちる。
自己嫌悪に陥り、帰りの車のハンドルを握った。
泣きそうだ。
大切な人が、言っていた言葉を思い出す。
「嫌な思いをしながら働いた金を、パチンコに使うなんてもったいない」
三万円は、何日働いた分なんだろう。
もう辞めよう。
こんな無駄な過ごし方は、もう辞めよう。
つづく。
※今回の話はフィクションです。
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