「今回は8枚売れたよ。ごめんね、そんなに売れなくて」
ポストカードを置いて貰っている、
ギャラリー喫茶”シュネム”のオーナーは、
いつも、申し訳なさそうに、こう言ってくれる。
「いやいや。置いて貰っているだけでありがたいっす」
俺も、いつものセリフで返答する。
いや、今回は8枚も売れたんだから、
俺にしたら上出来だな。
オーナーは、どんなお客さんが買ってくれたかを、いつも話してくれる。
俺は、その話を聞きながら、ポストカードの行方を想像する。
そして、そよそよと気持ち良い風のような感情が、心の中に流れる。
注文したアイスコーヒーを飲みながら、
オーナーと少しの時間、話をした。
オーナーの息子さんは、会ったことがないけれど、
年で言えば、俺の一つ上にあたる。
つまりは、オーナーは、俺の母親くらいの年齢になる。
その俺の母親は、俺よりも前にシュネムに来ていたのを後で知った。
行くたび、誰かかれかの作品展をしているのだけれど、
服を作っている人達も個展をしていて
その服は、母くらいの年齢の人達が喜びそうなものが観ていると多い。
母は、本当にたまあになんだろうけれど、
友達と喫茶店でコーヒーを啜りながら、
世間話をしたり、服をみて、束の間のひとときを過ごしているのだろう。
シュネムに来るお客さんは、母のような人達が多いそうで、
ポストカードを手に取ってくれる人達も、母のような人達が、多かったりする。
自分の子どもの今の状況に合うと思うって、買っていく人もいるって聞いた。
親から子へプレゼントされた楽雲庵塾ポストカード。
そこでは、どんな会話が生まれるのだろう。
「今日は、どうだった?」帰ってきた俺に母が聞いた。
「今日は8枚売れてたよ。そういえば、これシュネムのおばちゃんが、オカアにって」
個展の告知のハガキを母に渡した。
「観に行きたいねぇ」
母と一緒に行ったことはないけれど、
母と子が通っている喫茶店の話。
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