どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

三刀流


炭鉱で栄えた町、夕張に訪れた数日後、
無性に、他の炭鉱の町も見たくなった。

北海道空知地方に、炭鉱の町は集中する。
地図で見れば、北海道の中心より、やや左。


出発前夜、一旦、実家に寄ることにした。
父と母が俺を迎えた。

「前に預けたカメラどうなった?」

父が昔、使っていたフィルムの一眼レフを借りたはいいものの、
いざ、使おうとしたら、電池が切れており、
カメラ屋に聞くも、電池が合わず、
こうなったら、元々の持ち主である父にお願いするのが、
手っ取り早いということで、預けておいた。

父は、部屋に取りに行き、電池を持ってきた。

「もう、この電池は製造していないらしい。これに電池を入れて使うんだって」
父は、袋に入っている電池と電池カバーを俺に手渡した。

「これ、高いんだよね。俺もカメラ屋に持ってて、そう言われて、やったけどあわんかった」

手慣れた父は、カメラの底にある電池カバーを、
50円玉で開け、カバーを取り付けた電池を入れ、
カメラを構える。

見事、数十年ぶりにカメラは復活を遂げた。

自慢気な父は、昔、カメラクラブをしていた頃の話をし、
母に、「いばるんじゃない」と咎められる。

確かに、父が撮った家族の写真は良い。
特に、俺が、3歳にも満たない頃の写真は、
色あせているのもあって、すごい良い。

俺は、そのことを思い出し、父に聞いた。
「この一眼レフって、俺が高校の時に買ったやつだよね。その前のカメラってあるん?」

再び、父は、部屋に戻り、もう一個のカメラを持ってきて、
黒いカバーからカメラを取り出す。説明書付き。

「すげぇ、すげぇ」
あまりの古さに、俺は、感嘆の声を上げた。
俺に自慢気に教える父を母が「自慢するんじゃない」と咎める。

もう20年は使われていない、そのカメラも見事、復活を遂げた。


「これ、売ったら、高く売れるかもね」
父に、冗談を言って笑い、
その後、「大切に使わせてもらうわ」とカメラを眺めた。


これで、晴れて、俺は、三刀流となったのであった。





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