北の凡

いろいろあるけれど、それでいい

ばあちゃんと桜


「ばあちゃん、桜を観たいから神社に連れってってよ」

数日前、桜の記事が載っている雑誌を見ていて、
ばあちゃんちの近くにある神社に、
桜の木があることを知った。

ちょうど、桜は満開だろう。
ばあちゃんと桜を観に行くのも良いな。
ばあちゃんと桜ってのも合うだろうな。
写真を撮るのが楽しみだなって、
ばあちゃんちに向かった。

たぶん、道を聞けば、一人でも行けるだろうけれど、そこは、ばあちゃんと行きたい。
ばあちゃんが、俺の話に乗ってくるっていったら、「つれてって」しかないな。
そんなちょっとした作戦をたて、ばあちゃんに言った。

「ああ、良いよ」

作戦通り。
俺は、運転席に乗り、そうだ、助手席の戸は重いんだっけと、ばあちゃんが、乗りやすいように戸を開ける。
「いや、良いよ」と、ばあちゃんは後部座席の戸を自分であけ、乗る。

じいちゃんの助手席しか乗らないのか、恥ずかしがり屋なのか、
そういえば、ばあちゃんが、どこかに出かける時、
助手席に乗っているのを見たことがない。
何となく、しつこく聞くと嫌がるだろうなと思って、
理由を聞くのはやめることにした。

神社に、二人で向かう。
ばあちゃんの道案内を聞きながら、車を走らせる。

「こんな近くに、桜が咲いていたんだね」
思いのほか、桜の数は多く、人の数も多い。

「それじゃあ観ておいで」

「え〜、一緒に観に行こうよ」

ばあちゃんは、こんな格好で、人前に出るのは嫌だからと言う理由で、車に乗っていると言う。
ばあちゃん、一度言うと、頑として聞かない。
何度か誘うが、やはり、車にいると言う。

最後の最後、「ばあちゃんと桜」という写真は、撮れずに帰ってきた。
ちなみに、ばあちゃん、写真を撮られるのも嫌がる。