北の凡

いろいろあるけれど、それでいい

10 第4話

「秋といったら鍋。そして焼きいも」

ジャンケンで負けた幹事の俺は、
仲間の提案を受け、一人ぼんやり考えていた。

「部屋掃除するのも、めんどいな。どっか、良い場所ないかな」
部屋以外のどこか良い場所。
ふと、アパート、すぐ近くの集会所を思い出す。

見た目、一軒家。
その集会所には、子ども会だったり、老人会だったり、太鼓の練習だったり、そろばん教室だったり、とにかく賑わいを見せる。

「あそこなら、俺の部屋掃除をする必要もないし、広いだろうし、もってこいだな」ってことで、町内会長に電話をした。

「神社すぐ近くのアパートに住んでいるものなんですが、あそこの集会所を貸してもらえないでしょうか。・・・はい。7人です。え〜、夕方の6時から9時くらいまでです。はい。主に、鍋をします」

すんなり貸してくれた。
見た目一軒家。
入ってみても一軒家。

玄関を入ると、だっだ広い、何畳もある、
まさしく集会所という名にふさわしい部屋があって、
その脇には、6畳ほどの小さい部屋がある。
テレビがあって、こたつがあって、
俺達7人には、ちょうど良い。

それから、秋になり、冬になると、
俺達は、その集会所を借りて鍋をし、くっちゃべる。
何度、繰り返しただろうか。


今年、2度目の鍋。
2度目の鍋の前日、俺は、家のストーブの前で考える。
そして、みんなにメールを送った。


「4月、北海道に転勤することになった。今まで言えなかった」


当日、何事もなかったかのように、
タワイモナイ話をし、クダラナイ話をし、
笑い、笑う。

俺は、カメラを持ち、今という時間を止める。


まだ、時間はある。
そして、すぐに、会おうと思えば、会える。


「すぐ来るよ。今年の冬、いや夏か」

「1ヶ月前には言って」

「ああ」

「すぐ、ダミだ〜って電話してこないでね」


何か、すぐ会えると思うと、寂しさも紛れる。

今まで、俺は、友達を見送る側にいた。
高校の卒業式は、進路が決まっていなくて、
大学の卒業式は、就職が決まっていなくて、
みんなが新しい生活を迎えるよりも一歩遅れて、
俺は、北海道を後にし、仙台を後にした。

それが俺なんだろう、勝手にそう思っていた。


いつもは、「早く桜よ、咲いてくれ」そう言っていたのに、
今年は、寒い雪の日が来ると、ほっとしていた。