俺が漕ぎ出した船は、仙台を経由して、新潟に辿り着いた。
数えること今から7年前。
その7年前は、社会人としての船出とちょうど重なる。
「社会は荒波だ」
誰が、そう例えたかは知らんけど、
その意味を知るのに、そんなに時間を要しなかった。
新潟に来て、半年ばかり経った頃、
既に、荒波に飲み込まれ、
日本海の真ん中で、俺は溺れた。
仙台にいた4年で、
誰も知っている人がいない環境でも、
やっていける自信を身につけた。
その自信、木っ端微塵に、海の底。
働きがい?
生き甲斐?
その灯りまったく見えず。
もがくのにも疲れ果て、
ただ、息をしている。
そんな状態だった。
近い将来、「こうなったら良いな」と思う自分を、ノートに綴る。
何か、藁にもすがりたい気持ちで。
それから、さらに半年の月日が流れる。
つまりは、新潟に辿り着いて1年が経過した春。そして夏を迎えていた頃。
俺は、ちっちゃな船を立て直し、
再び、航海に挑戦していた。
この物語は、ちょうどその頃から始まる。
「今、焼き肉してるんだけど来ない?」
既に、夕飯は済ませていたけれど、
同年代と話せることが嬉しかった。
そこには、3人の女の子がいて、
俺と同じ年に、社会人として船出を始めた3人だった。
そこで話した内容は、ほとんどと言って良いほど覚えていない。
ただ、ひさびさに、心の底から楽しみ、しゃべりまくっていたのは覚えている。
今となっては、その3人が、「焼き肉、食べきれないから、俺を呼ぼう」ってことになったのも、笑い話だ。
俺は、新潟に辿り着いた数年後、
藁にもすがりたい気持ちで、あの1年目に書いたノートを開く。
そこには、何個も書かれていて、
その一つに、
「仲間が欲しい」
そう書かれていた。