凡の花

いろいろあるけれど、それでいい

10 第2話

俺が漕ぎ出した船は、仙台を経由して、新潟に辿り着いた。
数えること今から7年前。
その7年前は、社会人としての船出とちょうど重なる。

「社会は荒波だ」

誰が、そう例えたかは知らんけど、
その意味を知るのに、そんなに時間を要しなかった。

新潟に来て、半年ばかり経った頃、
既に、荒波に飲み込まれ、
日本海の真ん中で、俺は溺れた。

仙台にいた4年で、
誰も知っている人がいない環境でも、
やっていける自信を身につけた。
その自信、木っ端微塵に、海の底。

働きがい?
生き甲斐?
その灯りまったく見えず。

もがくのにも疲れ果て、
ただ、息をしている。
そんな状態だった。


近い将来、「こうなったら良いな」と思う自分を、ノートに綴る。
何か、藁にもすがりたい気持ちで。


それから、さらに半年の月日が流れる。
つまりは、新潟に辿り着いて1年が経過した春。そして夏を迎えていた頃。

俺は、ちっちゃな船を立て直し、
再び、航海に挑戦していた。


この物語は、ちょうどその頃から始まる。


「今、焼き肉してるんだけど来ない?」


既に、夕飯は済ませていたけれど、
同年代と話せることが嬉しかった。

そこには、3人の女の子がいて、
俺と同じ年に、社会人として船出を始めた3人だった。

そこで話した内容は、ほとんどと言って良いほど覚えていない。
ただ、ひさびさに、心の底から楽しみ、しゃべりまくっていたのは覚えている。


今となっては、その3人が、「焼き肉、食べきれないから、俺を呼ぼう」ってことになったのも、笑い話だ。



俺は、新潟に辿り着いた数年後、
藁にもすがりたい気持ちで、あの1年目に書いたノートを開く。




そこには、何個も書かれていて、
その一つに、


「仲間が欲しい」


そう書かれていた。