携帯電話がぶっこわれた時に安く交換できるサービスを使い、
5,000円で、今日、新しい携帯電話が家に届いた。
ぶっこわれた人の携帯電話を回収し、
新品同様にして、そのサービスを利用している人の所に届けるらしいということは、今回、初めて知った。
だから、5,000円で済むんだね。
つまりは、俺がこれから使う、この新しい携帯電話も、
悲しい過去をしょってるってことになる。
なんらかの理由で、ぶっ壊れた携帯電話。
もしかしたら、俺同様、その持ち主は、電話番号を失った可能性は否めない。
これから、工場に送る俺の携帯電話も、
いずれ、誰かの手元に届く。
用意周到に、このサービスに入っていたという訳ではなく、
ただ、買う時に、料金が安くなるっていう理由で入ったサービス。
いずれ解約しようと思ってて、解約するのを忘れていたサービス。
めんどくさがりで助かった。
話は、1週間前の日曜日に遡る。
携帯電話が壊れたのが、ハプニングの始まりじゃなかった。
そう。もう一つの物語が存在する。
それは、カメラがぶっ壊れた話。
モノは大切に使おうって話。
俺は、個展の準備のため、カメラを持ち、写真を撮りに出かけた。
そろそろ、家に帰ろうかな。カシャ。
そう思っていた矢先、手からカメラが落ちた。
「ちょっと傷がついちゃったな」
そんなことを思い、カメラを拾い上げる。
事態は、そんな生優しいもんじゃなかった。
レンズは曲がり、奇妙な音を立て、動かない。
何度も、何度も、電源を入れたり、切ったりする。
が、そのたびに、奇妙な音を立て、レンズは動かない。
「やばい、個展も残すところ1週間。写真はだいたい撮ったにせよ、まだ撮りたいものが、いつ現れるかもわからない。くそ〜、あきらめるわけにはいかない。あきらめきれない」
俺は、カメラを持ち、店に行った。
2,3日でなおるのを願いながら、持って行った。
「見積もりに1週間。修理が完了するまで1ヶ月です」
グッバイ。
今、カメラが必要な時期なのによ。
誰が悪いって俺が悪い。
カメラをどうするかって思案すること数日。
途方に暮れる。
そんな時、ふと思い出す。
俺には、もう一つカメラがあった。
慌てて、俺は、そのもう一つのカメラの所に行き、
埃を払い、ケースから取り出す。
無事だ。たぶん。
そのカメラは、親父から受け継いだもの。