「横をこの長さにすると、縦は・・・・」
俺は、もっと高く、凧を飛ばしたくて、
もっとでかい、凧を作った。
なんていう種類の凧だったか。
ビニールで作り、両サイドに1本ずつの棒をつけ、
棒から先、三角形になっているてっぺんに、1本ずつの糸をつける。
売っている凧を買ったこともあったが、全然、飛ばず、
この通称、ビニール凧が初めて、空高く飛んだ。
中央には、好きな絵や文字を、マジックで入れる。
たぶん、ぬけ作先生を描いていた気がする。
俺の実家は、畑が多く、
凧を飛ばすには、もってこいの場所だ。
そのでっかい凧は、見事、空に舞う。
「もっと、もっと高く飛ばしてぇな」って、
今度は、タコ糸を、合体させる。
2本分にしても、飽きたらず、
3本分のタコ糸を、1本にする。
タコ糸も強烈な長さ。
あまりのひきの強さに、糸は、ナイフのような状態となり、
指を切りながら、飛ばす。
何百メートル上空を飛んでいるんだろう。
あんなでっかい凧が、小さく見える。
嬉しくて仕方がない。
何度目だっただろう。
その時は、今までになく高いところを飛んでいた。
そう思っていた時、
一気に、手元の手応えはなくなった。
視線の先の凧は、ゆらゆらと揺れ、
ゆっくりと落ちていく。
糸が切れた。
それは、結び目から切れたのか、耐えられなくなって途中で切れたかは、
定かではないが、とにかく切れた。
俺は、泣きそうになりながら、
じっと、落ちていく凧を眺めた。
「もう、あの高さからだと、どこに行ったかも見つけられないだろうな。あ〜あ、住所を書いておけば良かったなぁ」
探すのをあきらめ、いじけながら、家に向かった。
こんな雪降る季節の数十年前の記憶。