北の凡

いろいろあるけれど、それでいい

十年来の友と過ごした南の海で

空は鉛色。
枯葉を一気に落とすかのように、「ビュウ、ビュウ」と風が吹く。
左右に揺られる木に、鴉が一匹。
「さみぃだろうな」と、俺は窓越しに、その鴉を眺める。

風が冬をつれてくるみたいだ。
北海道にも、雪が積もった頃だろうな。

夜の訪れも、めっきり早い。
夜の訪れが早いのも淋しい限りだ。
暗くなったら、家に帰らないといけない。
そんな幼い日の記憶が残っているのだろうか。

夕飯の時間には、まだ早い、そんな時間。
俺の携帯電話がなる。

「珍しいな」

そう思いながら、電話を耳にあてる。

「兄ちゃん、正月に帰ってくるの?帰ってくるなら、仕事の休み合わせるけれど」
珍しく、北海道にいる妹からの電話。

「まだ、わからんけど、できるだけ帰りたいとは思ってる」

「ばあちゃんも心配してたよ」

「ばあちゃんが心配するのは、俺に限ったことじゃないよ」
そう言い、ばあちゃんの顔を思い出す。

「そうだね」と妹は、うなずく。

「それで、バリはどうだった?」
いつだったかも忘れたけれど、
妹が初の海外旅行に出かけた感想を聞いていなかったと思い出し、質問する。

「良かったわぁ。あの潜るやつ」

「スキューバか?」

「そうスキューバ。ただ、怖くてすぐに上がった」
俺は、見てもいないバリの青い海を想像する。

「あぁ、ジョーズが出るからな」

「ふふっ。酸素が上手く吸えなくてさ」
酸素が、うまく吸えないってあり得るのか?

「もったいねぇな。良いなぁ、スキューバ。そういえば、俺も素潜りしてるよ」

「金がないから、とうとう漁?」

「馬鹿野郎」


話を聞けば、高校の時の同級生4人で、バリに行ったらしい。
キューバが楽しかったって割には、すぐに上がったって言ってたし、
そりゃあ、楽しいうちに入らないだろうと思ったけれど、
友達と一緒に過ごす時間が最高だったってのは、聞かなくてもわかる。
今でも、高校の時の友達を大切にしていることが、
何か嬉しくて微笑んで、妹の話を聞いた。

妹が、高校を卒業して、数年経った頃だろうか。
新しい環境で、新しい友達もでき、楽しげに生活している妹に、俺は、こう言った。

「新しくできた友達も大切にするけれど、今まで出逢って、仲良かった奴も、
ずっと大切にしろよ。仲良くなれる奴は、そうそういるもんでもない」

「うん」と、素直に聞いた妹は、
俺の話を聞かなくても、
今まで出逢ってきた友達を大切にしているんだろうな。