凡の花

いろいろあるけれど、それでいい

風来坊

子どもの頃、「あんたは、風来坊みたいだ」と母ちゃんは俺に言った。
意味がわからなかったけれど、響きはかっこよかったから、良しとした。

またある日、母ちゃんが、俺に「あんたは、鉄砲玉だ」と言った。
また意味がわからなかったから、母ちゃんに、「どういう意味だ?」と聞いた。
「一回、出て行くと帰ってこない」という意味だと教えてくれた。

「風来坊も、そんな感じの意味だろ?」と推測を立てて、
そのままにしていたけれど、改めて辞書をひっくり返して調べてみた。

【風来坊】
�@風のようにどこからともなくやって来た人。
�A気まぐれで落ち着きがない人。
(引用:旺文社 国語辞典


ここ近年は、あらかじめ、連絡をしてから、
人に会うように心がけているけれど、
どうも、計画を立てるのが苦手なのもあって、
会えればラッキーだと、その日か、前の日に連絡をする。

北海道に帰った時、
そんな一人が、母ちゃんの兄さん。
つまりは、俺のおじさんにあたる人で、2分の1の確率で会えない。
会えないと言っても、連絡もせずに会いに行く俺のせい。
会えない時は、「また気が向いた時にでも来るかな」と北海道を後にする。

そのおじさん。マリナーズの城島似だと思ってるんだけど、
今のところ賛同は得られていない。

昔は、相撲取りを目指していたらしく、
体格は筋肉質で、夏は、上半身裸。
海の男がぴったりと合うようなおじさんだ。

あれは、何年前か。
その2分の1の確率で会えた時の話。

おじさんは、俺にこう言った。
「お前の苦労は、苦労じゃないよ。本当の苦労は、金での苦労だ」

そのおじさん。昔は、食えない程、金がなかったらしい。
食えない程のところから、今は独立をして店を構えている。

俺は、「よく独立する決断ができたね」と聞いた。
すると、隣にいたおばさん、つまりは、おじさんの奥さんが、俺に話してくれた。

「決断をするまでは、食欲も落ちてね。相当、悩んでいたよ」
おじさんは、おばさんが言った「失敗したとしても、また元に戻るだけよ」という言葉で独立を決めたらしい。

次は、冬に北海道に帰った時にでも、おじさんの武勇伝を聞かせてもらおう。



秋の夕日は、子どもの俺が、外で遊んで、家に帰った時を思い出させるけれど、
俺が故郷を想うのは、何も秋ばかりじゃない。