「このおじいちゃんの写真、めっちゃ好きです。すみません何度も言っちゃって」
個展1日目の夜、興奮気味で、俺に感想を言ってくれた女性がいた。
「何度も、何度も言ってください。その度に喜びますから。この写真は、個展のために用意したものなんですよ」伝わってくれた人がいてくれて、喜びながら、俺は答える。
「このおじいちゃんって、何で、花をつけてるんですか?」と女性が尋ねる。
「花をつけている理由は、その人の想像にまかせたいんです。ちなみに俺は、ばあちゃんがつけてくれている説をおしていますけどね。じいちゃんが、散歩が楽しくなるようにって、ばあちゃんがつけてくれていると思います」と答える。
「私は、ばあちゃんが死んで、じいちゃんが、ばあちゃんを思い出して、つけていると思います」
その女性が考えた物語を聞きながら、俺は胸が熱くなった。
やっぱり、その人の想像にまかせて良かった。
せつないけれど、良い物語を聞けた夜だった。
中越沖地震の後、
そのじいちゃんが、どうなったか気になっていた。
当分の間は、散歩ができないだろう。
道は、ところどころボコボコ。
いつ余震がきてもおかしくない。
そんな今日、じいちゃんに会った。
いつものように、同じ道を散歩していた。
「大丈夫でしたか?」俺は、嬉しくて、小走りに、じいちゃんのところに寄っていった。
「1日目は、避難所だったよ。それで、写真はできたかい?」
会う度に、写真を楽しみにしてくれている。
今日も、そうだった。
「綺麗な形にして、プレゼントします」
アルバムに入れ、メッセージをつけて、贈りたいと思っている。
喜んでくれたら良いなぁ。