凡の花

いろいろあるけれど、それでいい

自分の手で掴むために

俺の携帯電話に登録している電話番号の中には、
「+」で始まる番号がある。

その電話番号は、オーストラリアにいる友達の電話番号で、
その番号は、メールのやりとりをする時に使う。
携帯でメールができることを知った時は、びびった。


先日、メール専用だとばかり思っていた電話番号から、着信がある。
かれこれ1年半ぶり。

1年半も、オーストラリアにいれば、しゃべり方が変わっているかなと思ったけれど、
今までどおりの、ちょっとスローテンポで、優しい声が、
電話口から聞こえ、俺は、ほのぼのとする。

辛いことがあったというのは、メールのやりとりで知っていた。
こういう時に、話ができないのは、辛いなと思っていたところだった。

俺は、機関銃になりそうな口をぐっと堪えて、こう言った。
「1年半も話していなければ、話したいことは山ほどあるけれど、
今日は、俺の話はいいから、話を聞かせてよ」

「ちなみに今、日本時間で22時ね」

「オーストラリアは、2時間の時差だから、0時」

日本とオーストラリアの時差が2時間しかないことを初めて知った。
2時間しか時差がないのに、何で、四季が逆転するんだろうと、
余計なことが頭を駆け巡るが、今日は、そんなことに集中するところじゃない。
俺は、日本とオーストラリアの時差と四季の逆転の関係についての、
思考をシャットダウンする。


その友達は、自分の幸せを、自分の手で掴むために、行動を起こし続ける。
今回もそうだ。

うまくいかない時もあって、苦しんで、悲しんで、泣きじゃくった時もある。

俺は、ほとんどの場合において、無力だ。
ただ、ただ、うなずくばかり。

俺は、せめて、こうつぶやく。
「もし、1回、辛いことがあったら、連絡をちょうだいよ。俺が、1回、笑い話を届けるからさ」


悲しみや、怒りの感情が何で、
人間に備わっているのだろうと、考えたことがある。
なければ、もっと楽なのになと、思ったことがある。

ただ、幸せを掴むために、致し方がないのであれば、
俺は、その悲しみや怒りは耐えようと思う。
嫌だけどね。

その分、お釣りがくるくらい、笑ってやろうと思う。


オーストラリアから帰ってきた時、パワーアップしているのが、目に見える。
俺も負けじと、がんばるよ。