その一本の電話は、幸せな夢のようだった。
寝ぼけまなこで、とった携帯電話。
携帯電話を手にとったことすら、夢と現実の境目。
名前を聞いて、一気に目が覚める。
顔が蘇ってきて、一気に嬉しくなる。
教育実習の時に出逢った生徒からだった。
何ヶ月前か、何年前かも忘れたけれど、
地元の友達が、一緒の職場で働いていて、
「俺の電話番号とメールアドレスを、聞かれたから、教えておくね」って言っていたのを思い出した。
あまりにも、長い期間が経ったから、
その話すら忘れていた。
自分が楽しい生活を送れるようになったら、電話しようと決めていたらしい。
それが、今になったって言っていた。
「辛い時だって、電話して良いんだぞ、
覚えてくれていた、それだけで、俺は嬉しいんだ。」
と電話口で答える。
教育実習から、今に至る俺の話は、
怒濤の如くある。
「うけるね」と、
何度も聞こえる、笑い声。
あまりにも嬉しくて、
ついつい自分の話ばかりする悪い癖が出てしまったと、
後で、反省した。
たぶん、なかなか電話はしずらいと思うけれど、
また、いつの日か、電話をちょうだいよ。
嬉しいことや、悲しいこと、辛いこと、何でもいいからさ。
何も無くてもいいや。
何も無い時は、俺の話をするからさ。
ここぞとばかりにね。
これからも、笑って暮らせるように、
俺は、ここで、陰ながら祈っているよ。