どんまい

いろいろあるけれど、それでいい

国道156号線と2本の老桜


この旅で、もう一つ、自分の目で、観てみたいものがあった。


それは、国道156号線


そして、国道156号線脇にある荘川桜。


この国道156線を、ある想いを抱き、何度も通った人がいる。
その人は、バスの車掌だった。

その人は、国道156号線上に桜を植え続けた。
日本海と太平洋を桜の道で繋ぐんだ」と
夢を抱き、夢半ばで死んでいった。


その人の名は、佐藤良二さん。


俺は、早朝、今回の旅のもう一つの目的を果たすため、国道156線上にいた。
岐阜県美濃市から荘川桜を目指す。

荘川桜に続く、その道には、ところ、どころに桜が舞う。
「この桜か、この桜か」と想い、想いに走る。
後ろから車が来たら、自分の車を一旦、停め、国道156線を走る。
山に向かう、その道の路肩には、雪が残っている所もあり、ここら辺では、春がやっと来たという感じだ。


走ること数時間。
そして、辿り着いた荘川桜。
佐藤良二さんが、桜を植え続けた、きっかけがここにある。

荘川桜は、ダム沿いに咲く。
ダムの湖底には、人々が住んでいた集落が過去に存在した。
日本が高度経済成長期の頃。
その集落から、移植された2本の老桜。
ダムの工事を担当した、当時の総裁が移植を考えたらしい。
移植は、困難を極めたが、無事、花を実らせ、今も咲く。

移植後、咲いた荘川桜の幹に抱きつき、声を上げて泣いた老婆を、
見たのがきっかけで、佐藤良二さんは、国道156号線に桜を植え始める。
「人々が仲良く暮らせるように」と植え続ける。
そして、その数は、12年間で2,000本にも及ぶ。
佐藤良二さんが亡くなった今でも、その志は、受け継がれ、桜が植え続けられている。



俺が訪れた時は、まだ蕾だったけど、2006年、桜祭りの最後にふさわしい国道156号線と2本の老桜。
こうして、今回の紀伊半島の旅、2006年、桜祭りは終了した。