俺はとにかく涙もろい。
本当にだめなんだ。
我慢ができないんだ。
我慢できるものなら、我慢をしている。
男は涙をみせないって言葉があるけれども、
この言葉は守れそうもないから守らない。
親の涙はなかなか見ない。
今までも2〜3回しか見たことがない。
だから、親は強くて、安定している存在のように勝手に思っていたわけである。
あんまり見たことがないものだから、親の涙はそれだけ俺に衝撃を与える。
今日はそんな親の涙の話。
あれは中学校の時だった。
俺は珍しく家の手伝いをすることにした。
本当に気まぐれで。
皿洗いをすることにした。
皿洗いを完了した俺は満足気だった。
すると、母は俺にこう言った。
「泡がついている」
その言葉が無性に腹が立った。
誉められるはずの俺の行為。
手伝い。
「ふざけんじゃね〜!」とけんかになったわけである。
体が反応してしまった。
足払いをした。
オカアは泣いた。
足払いで転んだというわけではない。
けがをしたというわけではない。
たぶん、息子が足払いをしたという事実が悲しかったのだろう。
今だから思うけれども、親も完璧ではなく、強くもなく、安定ばかりしているわけではない。
親は親で必死に俺等を育てていたんだろう。
その日は、何か嫌なことがあったのかもしれない。
とにかくオカアを泣かした。
妹が間に入り、
ネコのトラが間に入り、
オカアと俺のけんかは幕を閉じた。
オカアの涙はかなりの衝撃を与え、
罪悪感は半端じゃなく、
俺も布団をかぶって泣いた。
それ以来、どんな腹が立つことがあっても女性に手はあげないと心に誓った。
いつもそうなのだが、どんなに怒っても、
つぎの日の朝になれば、いつものようなオカア。
泣いた次の日で、俺は顔をあわせずらいのに、
つぎの日の朝になれば、いつものようなオカア。
ちなみに、高校の時は、妹に
「親に頭をさげさせることはするな」と偉そうにほざいていた。