放課後、彼女を自宅近くまで自転車を押しながら送った。
時間にして30分くらいだっただろうか。その時間が楽しみで仕方がないはずなのに、2人の間に会話はない。ただ、黙って、その30分を自転車を押しながら並んで歩いた。
私の心の中は、言葉で溢れているが、自分自身との会話に終始し、声にはならず、別れ際に、じゃあねとだけ声を発し、私は、自転車に跨る。
彼女と手紙のように、ノートにたわいもないことを書いて交換していた。声に出すと何を話して良いかわからないのに、ノートには、すんなり書けた。ノートでコミュニケーションをとっていたといっても良い。
そんな日々は3ヶ月で終わった。
ふられる日って、ふられてもいないのに、雰囲気でわかる。
中学生の頃の思い出を思い出した。
そんな日に、カツセマサヒコ『明け方の若者たち』を読んだ。
大学を卒業する間際にできた彼女との物語。
読みながら、どこか別れが孕んでいるような気がして、私の過去のいろんなスイッチが押された。恋愛を書くなら、こうであって欲しいという内容だった。
社会人になりたての自分とも重なる時があって、社会人なりたてで踠いている若者にも読んでほしい。